毎日泥だらけになって働いているのに、通帳の残高が増えない。
親記事でも触れた通り、中規模農家のモデルケースでは、年間所得300万円・年間労働3,500時間の場合、時給は約857円まで下がる可能性があります。

売上は立っているのに手元の現金が増えない。農家のリアルな資金繰りの悩み。
時給を上げ、手残りを増やすための第一歩は、新しい作目を増やしたり規模を拡大することではありません。
まずはあなたの時間と現金を奪う対象を見極め、「捨てる(縮小・一時停止する)」引き算の経営から始める必要があります。
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現状直視|あなたの「現状時給」と手残りが減る原因
農業において「売上」と「手残り」はまったく別物です。
まずは以下の計算式で、ご自身のリアルな「現状時給」を出してみてください。
手残りが減る最大の原因は、畑での作業以外に、細かな選別、事務作業、移動、直売所への出品など「直接お金を生まない時間」が膨れ上がっているからです。


畑での作業以外に奪われる「直接お金を生まない時間」が時給を下げる。
ここから低採算な作業や販路を見直し、粗利を維持しながら年間労働時間を2,000時間まで減らし、手残りを400万円まで引き上げられれば、時給は2,000円になります。
さらに、浮いた時間を高単価な販路へ再投資し、年間労働1,500時間・手残り450万円の経営を目指せば、時給3,000円台という目標が見えてきます。
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捨てる仕事術❶|作期単位の「時給換算」で低採算な作目から撤退する
作目を減らす決断は、なんとなくの忙しさではなく「作期単位の時給」と「先出し資金の重さ」で判断します。
農業は、売上が入る前に種苗費・肥料代・農薬代などの現金が先に出ていく「先出しのビジネスモデル」です。
仮にA品目の粗利が1作期で12万円あっても、播種・防除・収穫・選別・出荷に合計180時間かかっていれば、作期単位の時給は約667円です。
120,000円 ÷ 180時間 = 約667円
さらに肥料や農薬の支払いが収穫前に集中するなら、売上があっても資金繰りを圧迫します。

収穫・入金のはるか前に発生する重い「先出し資金」が経営を圧迫する。
こういった作目は、いきなり全廃する必要はありません。

「次作から作付け面積を半分に減らす」「手のかかる特定の品種だけやめる」など、段階的な縮小・撤退の候補に入れてください。
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捨てる仕事術❷|「見えないコスト」を食う販路から撤退する
少しでも多くの場所で売れば利益が増える、という考えは経営を苦しめます。
特に直売所などの販路は、以下のシビアな採算式で評価し直す必要があります。

仮に、ある直売所で月に5万円の売上があったとします。
しかし、販売手数料が8,000円、梱包資材に5,000円かかり、毎朝の出品と売れ残り回収に月20時間、さらに売れ残りロスが7,000円発生している場合、見かけの売上ほど手残りは発生していません。
売上50,000円 - 手数料8,000円 - 梱包費5,000円 - 移動時間相当額20,000円 - 売れ残りロス7,000円 = 手残り10,000円

直売所への少額出荷は、梱包や移動時間、売れ残り回収の手間で手残りが消滅しやすい。
さらに、売上額が大きくても入金が数ヶ月先になる取引先は、手元の現金を枯渇させる原因になります。
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捨てる仕事術❸|売上に直結しない「過剰品質」と手作業を捨てる

品質の向上を追求することは生産者の誇りですが、度を越えたこだわりは時給を著しく引き下げます。
たとえば、「少しでも形を揃えるために、手作業で何段階にもサイズ選別をしている」「雑草を一本残らず手で抜いている」といった作業です。

顧客が求めていないレベルの過剰な選別作業は、時給を下げる自己満足になりがち。
しかし、顧客が本当に対価を支払っているのは「見た目の美しさ」なのか、それとも「味」や「安全性」なのかを客観的に見極める必要があります。
改善のステップとして、まずは「選別基準をあえて1段階緩めてみる」ことをお勧めします。
重要なのは、「自分が納得できる品質」ではなく、「顧客が対価を支払う品質ライン」を見極めることです。

基準を緩めても実害が出ないのであれば、次作からその手作業は削減候補になります。
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捨てる仕事術❹|「自分で抱える仕事」と現金を食う「設備」を手放す
「自分にしかできない」とあらゆる業務を一人で抱え込んでいる状態では、労働時間の限界がそのまま売上の限界になってしまいます。
作業をマニュアル化してパートに任せる前に、「そもそもこの作業自体をやめられないか」を最初に問うてください。
同時に見直すべきは、維持費や修理費が現金流出を招く過剰な農機具設備です。


年に数回しか使わない古い機械は、突発的な修理代という現金を食う時限爆弾になる。
年に数日しか稼働しない機械であれば、リースへの切り替えや、近隣農家とのシェア、あるいは売却も含めて段階的な手放しを検討してください。
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再投資|生み出した「時間と現金」を単価アップへ回す
無駄な作目や作業を削って生まれた時間は、単なる休息のためではなく、利益率を高めるための「再投資」に使います。
時給3,000円を目指すには、この浮いた時間を以下のような「単価アップ施策」へ振り向ける必要があります。
・近隣の飲食店へ直接営業する
・価格決定権を持てる販路を構築する
・規格外野菜を活用した加工品を開発する
・リピート購入につながる情報発信を行う
改善の方向性としては、直売所の移動にかけていた時間を「自社の直販用Webページの整備」や「近隣の飲食店への直接営業」に回し、価格決定権を持てる販路を構築することが挙げられます。
また、過剰品質をやめて出た「規格外野菜」を活用した加工品開発など、自社で単価をコントロールできる仕組みづくりに注力することも有効です。

効率化で浮いた時間を、価格決定権を持てる直販ルートや飲食店開拓へ再投資する。
作業者としての時間を減らし、利益を生み出す経営者としての時間を増やす。
このサイクルを回すことが、時給改善の最大の鍵となります。
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農家の効率化と「捨てる決断」に関するよくある質問(Q&A)


数字が見えなければ、どの作業が時給を下げているのか客観的に見直すことはできません。


利益率の低い売上を減らしても、それに伴う作業時間や資材費、移動コストが大きく減れば、結果的に手残りが改善する可能性は十分にあります。


無駄な作業を残したまま高額なシステムを導入しても、設備投資のローンが重くのしかかり、資金繰りをさらに悪化させるリスクがあります。


利益率が多少低くても、手元に現金を残す役割として、維持や段階的な縮小に留めるなど慎重に判断してください。


組織が小さく、撤退や販路変更の経営判断が素早くできることは小規模農家の強みです。ただし、地域や作目、現在の負債状況によって難易度や到達までの時間は変わります。
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時給3,000円に向けて今日から始める3つの手順
記事を読んで納得するだけでは、明日の経営は変わりません。
まずは以下の3つの手順を、今日からすぐに行動へ移してください。
・作目別時給:作期単位の粗利 ÷ 作業時間
・販路別手残り:売上 - 手数料 - 梱包費 - 移動時間相当額 - 売れ残りロス

まずは作業時間を正確に計り、数字に基づいて「やめるべき作業」を可視化することから始めましょう。
ご自身の現状数値を客観的に書き出すことが、すべてのスタートラインです。

次のステップとして、上記の計算式を使い、作目別・販路別に「続けるもの/減らすもの/一時停止するもの」を書き出してみてください。
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