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イネカメムシ対策の決定版|不稔による減収を防ぐ防除時期と有効薬剤の選び方

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1. はじめに:今、日本の水田で何が起きているのか

近年、全国各地の稲作現場で、ある害虫の存在が大きな波紋を広げています。その名は「イネカメムシ」

かつては「謎の多い害虫」として扱われてきましたが、2024年には31道府県で注意報が発令されるなど、記録的な発生を見せています 。従来の斑点米カメムシ類(アカスジカスミカメなど)とは一線を画すその生態は、多くの農家を困惑させています 。

なぜ今、イネカメムシがこれほどまでに増えているのか 。そして、私たちの主食である「米」の収量と品質を守るためにはどのような対策が必要なのか。本記事では、最新の調査データと専門的な知見に基づき、イネカメムシの正体から具体的な防除方法までを徹底解説します。

2. イネカメムシとは? その特徴と急増の背景

イネカメムシ

イネカメムシの基本スペック

イネカメムシ(Lagynotomus elongatus)は、以下のような特徴を持ちます。

  • 外見: 体長は約13mmで、淡黄茶褐色をしています 。
  • 特徴: 背部のへり部分が黄白色の斑点米カメムシ類の一種です 。
  • 他のカメムシとの違い: 一般的な斑点米カメムシよりも大型で、イネへの嗜好性が非常に強いのが特徴です 。

なぜ「今」大発生しているのか

イネカメムシは1950年代までは主要な害虫でしたが、農薬の普及とともに一旦は姿を消しました 。しかし、近年になって再び猛威を振るい始めた背景には、いくつかの要因が重なっています。

  • 作型の分散化: 極早生品種から超晩生品種まで栽培品種が増加し、地域内で出穂期を迎える水田が連続的に出現するようになったことが増加に寄与したと考えられます 。
  • 気候変動: 6月下旬以降に暑い日が続くと飛来が早まる傾向があります 。
  • 「超イネ派」な性質: イネに対する依存度が非常に高く、水田周辺のイネ科雑草で見かけることは比較的少ないため、従来の畔の除草だけでは効果が薄いとされています 。

3. 「超イネ派」な生態:知られざる繁殖サイクル

イネカメムシは他のカメムシのように「雑草を渡り歩く」ことをあまりしません。

越冬と春の動き

イネカメムシは「成虫」の状態で越冬します 。冬の間は、山林に隣接する水田の落葉の下や枯草、土の隙間などでじっと春を待ちます 。

出穂とともに一斉飛来

7月頃、水稲の出穂とともに越冬場所から直接水田に侵入してきます 。彼らは驚くべき嗅覚で稲の穂を察知し、直接水田へ飛び込みます 。これが、畔の草刈りだけでは防除できない最大の理由です。

水田内での繁殖

水田に侵入した成虫は、穂を吸汁しながら交尾・産卵を行います 。卵からかえった幼虫も穂を加害しながら成長し、約1か月後に成虫となります 。収穫前には再び越冬地へ移動します 。

4. 被害の深刻さ:収量と品質へのダブルパンチ

イネカメムシの被害は、単なる「見た目の悪化」に留まりません。

① 不稔(ふねん)被害:収穫量が減る

出穂直後の非常に若い穂を吸汁されると、モミの発育が停止し、中身のない不稔籾が発生します 。発生量が多いと大幅な減収となる可能性があり、非常に厄介な害虫です 。

② 斑点米被害:品質・等級が下がる

乳熟期頃の吸汁によって玄米の一部が変色する斑点米が発生します 。イネカメムシはモミの基部(付け根)を加害するため、「基部斑点米」が多くなるのが特徴です 。これにより米の品質が低下し、経済的な損失を招きます 。

5. 実践! イネカメムシ防除の決定版

イネカメムシを防除するには、従来の「カメムシ防除」の常識をアップデートする必要があります。

対策1:防除のタイミングは「2回」が基本

イネカメムシは飛来時期が長く、繁殖力も強いため、2回の薬剤防除が効果的です 。

  • 【1回目】出穂期~穂揃期: 不稔の発生を防止し、収量を守ります 。
  • 【2回目】出穂期の8~14日後: 斑点米の発生を防止し、品質を守ります 。

対策2:効果的な薬剤の選定

イネカメムシに有効な薬剤を選びましょう。

  • 粒剤: スタークル粒剤、ダントツ粒剤などが挙げられます 。

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  • 乳剤: トレボン乳剤、スミチオン乳剤などがあります 。

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  • 豆つぶ剤: スタークル豆つぶなども有効です 。
    ※農薬を使用する際は、必ず最新の使用方法や注意事項を確認してください 。

対策3:地域ぐるみの「一斉防除」

イネカメムシは水田から水田へ移動するため、広域的に一斉防除を実施することが非常に効果的です 。地域内で調整を行い、なるべく一斉に散布できるよう協力体制を築きましょう 。

6. 早期発見のための見回りポイント

被害を最小限に抑えるには、ほ場での発生状況をいち早く確認することが重要です。

  • 時間帯: 真夏の暑い時間は株元に潜ってしまうため、気温の低い早朝や夕方に見回るのがポイントです 。
  • 場所: 周辺の水田より出穂期がとても早い、または遅い水田に集中するため、重点的にチェックしてください 。
  • 注意点: 6月下旬以降、暑い日が続いた後は注意深く観察し、初発を把握しましょう 。

7. 収穫後の対策:翌年の発生を抑えるために

収穫が終わっても油断は禁物です。 収穫後に生えてくる再生株(ひこばえ)は、秋の成虫や幼虫の餌資源となり、翌年の発生源となります 。収穫後は速やかに耕うんを行い、再生株を処理することが翌年の密度抑制に繋がります 。

8. まとめ:早期発見と適期防除で「黄金の穂」を守る

イネカメムシは手強い相手ですが、その生態を正しく理解し、タイミングを逃さずに防除を行えば、被害を最小限に食い止めることができます。

  • 毎日(特に早朝・夕方)のほ場観察を欠かさない。
  • 出穂期の「1回目防除」で収量を守る。
  • 収穫後の耕うんで翌年のリスクを下げる。

これらの対策を徹底し、高品質な米作りを目指しましょう。


参考文献・資料

今回の記事作成にあたり、以下の公的機関の情報を参考にしています。