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長野市を一大産地に!『ヘーゼルナッツ』栽培で夢を形に

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りんご、ぶどうに続け――“第三の果樹”としての挑戦

「実はヘーゼルナッツの栽培を始めたところなんです」

2025年3月、唐沢農機サービスにご来店くださった長野市在住の若いお客様が、そう話してくださいました。お話によると、2024年にスタートした長野市の「ヘーゼルナッツ苗木購入補助金制度」を活用し、ご家族とともに新たな農業に挑戦しているとのこと。この日は夏場の草刈り作業に備え、草刈機の導入をご検討中で、実際に作業を担うご両親と一緒にご来店いただきました。

長野といえば「りんご」や「ぶどう」といった果樹が有名ですが、「ヘーゼルナッツ」と聞いてピンと来る方はまだ少ないのではないでしょうか。私たちも最初は驚きました。というのも、日本で流通しているヘーゼルナッツのほとんどは輸入品。長野で本当に育つのか?どんな作物なのか?と、興味津々でお話を伺いました。

すると、ヘーゼルナッツは思いのほか手間がかからず、栽培がしやすいとのこと。殻が硬いため鳥獣被害が少なく、農薬や肥料もほとんど使わずに育てられるそうです。主な作業は夏場の草刈り程度で、環境にも身体にも優しい。しかも「国産」や「無農薬」といった付加価値をつければ、高級食材としての可能性もあるというのです。

ご両親が草刈り作業を担い、お客様ご自身は兼業農家としてサポート。世代を越えて協力する姿は、これからの地域農業の在り方を象徴しているように思えました。

今、りんごやぶどうに続く「第三の果樹」として、ヘーゼルナッツが注目されています。本記事では、そんなヘーゼルナッツ栽培に秘められた地域の希望と、就農の可能性を紐解きます。

先駆者の挑戦と成功―ヒントはイタリア・ピエモンテ州

長野市でヘーゼルナッツ栽培に挑戦した“先駆者”の存在が、現在の広がりの原点です。

先駆者である長野市の男性がそのヒントを得たのは、イタリア・ピエモンテ州の気候。現地を訪れた際、「ここは長野と似ている」と感じ、その直感を信じて帰国後に脱サラし、試験栽培を始めました。

そして3年後、初収穫に成功。品質の高さに自信を深め、ナッツ入りの生アイス専門店を長野市内にオープン。その味と話題性が地域内外で評判を呼びました。

さらに、知識や技術を広めたいという想いから、「栽培・加工・販売」を一貫して学べる「学校」を設立。次世代農業を担う人材育成にも力を注いでいます。

ヘーゼルナッツ栽培が楽な理由―“手がかからない”果樹

ヘーゼルナッツが注目される理由のひとつは、その“栽培のしやすさ”です。

■基本作業は夏場の草刈り程度
■殻が硬く、鳥やイノシシなどの被害が少ない
■棚仕立て不要で、遊休農地でも導入しやすい

機械化もしやすく、初期費用を抑えられるのも魅力です。体力に不安のある高齢者の方や、兼業で農業に挑戦したい方にも適しています。

6次産業化との相性―ナッツが生む“高付加価値”

ヘーゼルナッツのもう一つの魅力は、加工による高付加価値です。

   ■焙煎、粉末、ペースト、オイルなど、多彩な加工が可能
   ■長野産ヘーゼルナッツを使ったチョコレートが国際コンクールで入賞
   ■有名パティシエやショコラティエからの評価も上昇中

農産物としてだけでなく、食品・菓子産業との連携、輸出の可能性もあり、未来志向の作物といえるでしょう。

市の支援制度:苗木購入補助金

長野市では、ヘーゼルナッツの特産化を後押しすべく、2024年度より「ヘーゼルナッツ苗木購入補助金制度」をスタートしました。

制度の概要

■補助内容:苗木購入費の1/2(上限50万円)
■対象:市内の農業者(法人・個人問わず)
■条件:2アール以上の圃場を有すること

補助制度の活用により、初期コストが大幅に抑えられるため、新規就農への心理的・経済的ハードルがぐっと下がります。

▶ 出典: 長野市ヘーゼルナッツ営農苗木補助事業

“学校”で学べる、実践的なノウハウ

「やってみたいけど、本当にできるか不安…」

そんな方の背中を押してくれるのが、「ヘーゼルナッツ学校」です。

運営するのは、冒頭で紹介した、長野市で初めてヘーゼルナッツ栽培に成功したフル里農産加工の岡田浩史さん。岡田さんは、栽培のしやすさと国産化の意義を各地で発信し続け、2023年には全国で844人の生産者が誕生するまでに広がりを見せました。

「話すだけでは伝えきれない。だったら、いっそ学校をつくろうと考えたんです」

その想いから、研修施設と圃場を整備し、実践重視の学びの場を提供しています。

カリキュラム概要

■1回あたり2.5万円 × 全5回(1回ずつの受講も可)
■内容は栽培・加工・販売まで一貫して学べる
■岡田さん本人がマンツーマンで指導
■実地圃場での実習つき。初心者にも安心のサポート体制

「学んだらすぐに始められる」――そう実感できる内容で、全国から高い関心が寄せられています。

▶ 出典: 長野をヘーゼルナッツの一大産地に “第一人者”が新たな挑戦「学校」設立 有名店のショコラティエも期待

市と共に描く未来像―“メイドイン・ナガノ”への第一歩

長野市では、市長がヘーゼルナッツ振興への支援を明言し、地域ブランドの確立にも力を注いでいます。

■「メードインナガノ」ブランド化への取り組み
■農業・加工業・観光業を結びつける地域活性化モデル
■地域内での一貫生産体制の構築

ヘーゼルナッツという小さな実が、大きな地域の変革を生み出そうとしています。

農業の“次の一手”は、もう始まっている

少子高齢化や担い手不足が深刻化する中、長野市におけるヘーゼルナッツ栽培は、新たな希望を感じさせてくれる取り組みです。

補助制度、学びの場、そして先駆者の成功例という三拍子がそろったこの環境は、「就農してみたい」という思いを現実に変える力を持っています。

冒頭でご紹介したお客様のご両親が、乗用草刈機に試乗しながら「これなら広い畑も楽だな」と笑顔を見せていた姿が印象的でした。息子さんがその様子を見守る姿は、まさに“農業の未来像”そのものでした。

私たち唐沢農機サービスも、こうした地域の挑戦を応援し、情報発信と機械提案を通じて、地域農業のさらなる発展に貢献してまいります。