1. HOME
  2. 農業と農機
  3. 2025年も猛暑予想…高温障害から作物を守る最新技術と支援策とは?
農業と農機

2025年も猛暑予想…高温障害から作物を守る最新技術と支援策とは?

農業と農機

3

1. 異常気象が農業現場に迫る危機:2025年も猛暑の可能性

2025年の夏も、平年よりも高温になる可能性が高いという気象庁の長期予報が発表されました。温暖化の影響が年々深刻化するなか、日本の農業も“気候変動時代”への対応を迫られています。
過去の猛暑年には、全国各地で農作物への被害が相次ぎました。例えば、米では登熟障害によって白未熟粒が多く発生し、品質が大幅に低下。市場に出荷しても等級が落ち、価格下落の原因となりました。トマトでは高温による着果不良、果樹では果皮の日焼けや果実の落果など、収量だけでなく外観品質への影響も見られます。
とくに群馬県では、ナスにおける花芽形成不良や果実の黒変、ホウレンソウの生育遅延、果樹における日焼け果の発生など、高温による影響が多様な作物に及んでいると報告されています(群馬県 野菜花き課より)。これらの被害は単年で終わるものではなく、年を追うごとに発生頻度や深刻度が増していることが懸念されています。
今や高温障害は「例外的な異常気象」ではなく、農業の現場における“前提条件”として認識しなければならない段階にきているのです。


2. 高温障害が作物にもたらす主なリスク

高温障害とは、作物が適正な生育温度を超えてしまうことで発生する生理障害の総称です。とくに35℃以上の高温が連日続くような状況では、作物の光合成や呼吸バランスが崩れ、生育や品質に悪影響を及ぼします。
農作物ごとに高温障害の症状は異なりますが、以下のような例が報告されています:

  • 果菜類(ナス・ピーマン・トマトなど):花落ち、着果不良、果実の奇形や黒変が発生。果実肥大も遅れがちになります。
  • 葉物野菜(ホウレンソウ・レタスなど):葉焼け、しおれ、生育停滞。出荷サイズまで育たず、B品率が高まる傾向があります。
  • 水稲:登熟期の高温により、白未熟粒が増加。品質等級が下がり、農家の収入にも直結します。
  • 果樹(モモ・リンゴなど):果皮が日焼けし商品価値が低下。高温障害は花芽形成不良も招き、翌年の収量にも影響します。

こうした高温障害は、一時的な収穫量減だけでなく、市場価格の下落や長期的な販路喪失を招く重大な経営リスクとなります。


3. 高温対策として注目される最新技術

高温障害を防ぐには、環境そのものを変えるアプローチが必要です。農業現場では、以下のような先進的な取り組みが進んでいます。

遮光資材の導入(群馬県の推奨)

群馬県では、ナスやホウレンソウなどの露地栽培において遮光ネット反射シートの使用を推奨しています。遮光資材は日射を和らげ、作物や葉面温度の上昇を抑制する効果があります。
特に果樹園では、南西側に遮光ネットを設置することで、午後の強い日差しを避け、日焼け果の発生を大幅に減らすことができます。設置はシンプルですが、収量と品質の安定化に効果的です。

潅水の最適化とミスト冷却

高温になると蒸散量が増え、作物は多くの水分を必要とします。群馬県では、通路潅水ミスト散布装置を導入することで、ハウス内の気温を3〜5℃下げ、作物の生育環境を整える技術が紹介されています。
とくにミストは、水の気化熱を利用して空気を冷却するため、省エネで効率的な冷却手段として注目されています。

環境制御システムの導入

近年、ICTを活用した環境制御システムが普及しつつあります。センサーを使って温度・湿度・CO₂濃度を常時モニタリングし、状況に応じてミストや換気装置、カーテンを自動制御する仕組みです。
これにより、人手をかけずに最適な栽培環境を維持することができ、省力化と品質の両立を図れます。

高温に強い品種の選定と導入

品種改良も高温対策のひとつです。農研機構では、高温条件下でも品質を保つ水稲品種「にじのきらめき」などを開発。トマトやナスでも、高温下での花芽形成や着果が安定する新品種が各地で実証栽培されています。
群馬県でもこれらの品種導入に向けた現地試験が行われており、今後の普及が期待されます。


4. 国の支援制度:「高温対策栽培体系への転換支援」(農林水産省)

高温対策には初期投資が必要ですが、こうした課題に対して国も本格的に動き出しています。
2023年12月1日、農林水産省は「高温対策栽培体系への転換支援」事業を開始しました。この制度は、気候変動による高温被害の頻発を受け、農業現場が構造的に対応できる体制への転換を目的としています。

主な支援内容

  • 対象者:JA、農業法人、集落営農組織など
  • 支援内容:高温耐性品種への転換、遮光・遮熱資材の導入、ICT制御機器の整備など
  • 補助方式:地域の気象・作物条件に応じた実証モデルをベースに支援

この事業は、高温障害を“自然災害”ではなく“農業構造上の課題”と位置づけ、長期的な適応策を後押しするものです。


5. まとめ:避けられない猛暑、守る農業への転換を

2025年の夏も猛暑が予想され、高温障害への備えは“選択肢”ではなく“必須条件”となりつつあります。群馬県や農林水産省の取り組みからも分かるように、農業現場では遮光・潅水・品種転換・ICT技術の導入など、多面的なアプローチが求められています。
今後も地球温暖化の進行により、高温リスクはさらに高まると予想されます。だからこそ、最新技術や補助制度を最大限に活用し、経営と作物を守る「守る農業」へのシフトが重要です。
収量と品質を守ることは、単なる生産活動ではなく、農家経営そのものの安定に直結します!今こそ、気候変動に強い農業のあり方を、一歩踏み出して考えるタイミングではないでしょうか?

最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事が良いと思ったらスキを押していただけると嬉しいです。
他にも農業に欠かせない農機のメンテナンス記事などを掲載しておりますので、ぜひそちらも合わせてご確認ください!

https://sodateru-karasawanouki.jp/wp/%e8%be%b2%e6%a9%9f%e3%81%ae%e3%83%88%e3%83%a9%e3%83%96%e3%83%ab%e3%82%92%e6%9c%aa%e7%84%b6%e3%81%ab%e9%98%b2%e3%81%90%ef%bc%81%e6%95%b4%e5%82%99%e5%a3%ab%e3%81%8c%e6%95%99%e3%81%88%e3%82%8b%e3%83%a1/